これまで「DAYS」や「残響のテロル」など、多くの作品で印象的なキャラクターデザインを手掛けてきた中澤監督。原作・キャラクター デザイン・総作画監督も務め、本作が完全オリジナルにして長編シリーズ初監督となる本作へのメッセージを紹介しよう。

作品のモチーフ、きっかけについて

そもそもこれをモチーフにしてものを作ってみたいと思ったのが、“黒”という色でした。和装の礼服の黒色は他に類を見ないくらい黒いんですが、色んな染料があって、それを全部混ぜれば黒になるんだそうです。色んなものが混じると黒になるって、意外と分かっているようで知らないなと。とにかくいろんな色が混ざると黒になるって感覚が面白くて、それは念頭にあった気がしますね。

背景や街並みの景色について

最初にモチーフに出たのはクレモナというイタリアの観光地化されていない街。バイオリンなどの楽器製造で有名なところなんです。あとはキューバですね、当たり前のように旧車が走ってるんです。世界中にデザインが優れた国や町はいっぱいあって、そういうのをミクスチャーしていけば面白いんじゃないかと。

Netflix での作品作りについて

僕自身試したいことがいっぱいあって。昔のテレビはもっとたくさんできたんですけれど、今はできないことが多くなっちゃったのでやってないことをやってみたい、というのはずっとプロデューサーと話していました。日本のアニメはこういうやり方もできるんだよっていうのを少しでもできればと。やってよかったなというのはすごく思いました。

ダークヒーローを作りたい。そう思いついてから丸4年。やっとフィルムとして完成することができました。気がつけば、I.Gとしてもサイコパス以来、久しぶりの完全オリジナル作品。一筋縄ではゆかなかったけど、監督やスタッフ関係者とあれやこれやとやりながら、何とか満足ゆく形で完成を向かえることができました。視聴してくれた人が、その時間を楽しんでもらえれば嬉しいです。

本作の美しくもリアルな情景を手掛けた
美術デザインの伊井蔵と
美術監督の田中孝典からのコメント

街や建物のデザインについて

王立警察ビルは新旧が共存する市街地にあります。その象徴となるよう多様な建物が融合した奇抜なデザインを心がけました。これが中澤監督からの「B: The Beginning」らしい最初の要望だったと思います。

注目のシーンなど

「B: The Beginning」の世界はフィクションです。国や歴史の垣根を越えて色んな物が出てくるようになっていきました。日本建築も出てきます。ここでのアクションシーンは私のお気に入りです。中澤さんのアクションはどれも疾走感が有ってかっこいいですが、シチュエーションと相まって斬撃が最高に映えます。

王立警察特殊犯罪捜査課(通称「RIS」)の部屋について

RIS の部屋に関してはラフの設定しか描けませんでしたが、照明と部屋の大きさは Production I.G の制作部屋がモデルになっています。内装は東京丸の内の三菱一号館にあるカフェの雰囲気も参考にしています。

リリィの家の工房に関して、こだわったところはありますか?

この工房は家族の存在が見えない黒羽にとって職場であり家庭のような位置付けなので、内部の雰囲気に気を使いました。昼間は窓からの自然光と床からの光の反射を意識し、普段何気なく感じる暖かさを表現しています。夕方から夜にかけては本来仕事をするには暗すぎる照明に抑えています。現実的でなくてもキャラクターにフォーカスできる雰囲気を重視しました。

中澤監督から何かリクエストはありましたか?

例えば夜の表現について、最初の打ち合わせでヨーロッパの暗闇は日本と違って真っ暗でつぶれているんだ。それを出したいといった要望があったのが印象に残っています。シルエットだけでどこまで豊かに見せることが出来るかを考えました。東京と埼玉の境にある、狭山湖や多摩湖周辺の光が届かない森や水辺の雰囲気は今回常に頭にあった気がします。国や地域こそ違いますが、闇の向こうに見える光で成立する世界、見る人間の想像で補完する夜の表現のヒントになっています。